写真・文 さとうみかを
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博多で結婚式。

7つはなれた兄がタキシードを着て、
かわいいお嫁さんを連れて歩いてきた。

3人兄妹の長男。
慎也なので、呼び名は「しゃんちゃん」。

年の離れたしゃんちゃんの持ち物は
いつもきらきらしていて、
いつだったか少年アシベのテレホンカードを盗んだこともある。

そっと自分の引き出しに入れておいたら見つかって、
「これはみかちゃんのじゃないやろ!」と目をみて言われた。


もう少し大きくなってから、
しゃんちゃんは愛媛の大学へ行くことになった。
フェリー乗り場で見送り、
帰りの車で急に悲しくなって
泣くのは恥ずかしいと思いながら、
おんおん泣いた。小学6年生。


もう少し大きくなってから、
しゃんちゃんは就職し、正月帰省したときに
お給料で買ったY'sのセーターをくれた。

丁寧に薄紙に包まれているセーターをみて
心を読まれたのかと思った。
高校生。

このセーター、穴が結構たくさん空くまで
着倒して、社会人になっても着ていたな。
捨てた記憶はないけれど、いまはもうない。


私も社会人になって、
ある大きな分岐点に立ったとき
悩んで、困って、気がついたらしゃんちゃんに電話していた。
私が決めることだから、答えをくれる訳でもなく
ただ聞いて、一緒に悩んでくれた。

大工仕事と自然以外はまったく興味を示さない父に代わり、
物心ついたときから一歩先を行くしゃんちゃんは
少し父親のような存在でもあった。


今日。
晴れた今日。

しゃんちゃんがタキシードを着て、
かわいいお嫁さんを連れて歩いてきた。

式の最後、両親へお礼のことば。
途中、あのしゃんちゃんが涙で言葉を詰まらせた。
長い沈黙がつづいて
向かい合って立っているお母さんが
大きな声で「がんばれ!」と言った。

このときしゃんちゃんがこどもに見えて、
私たち兄妹3人はこの声で
がんばってこれたんだと思い出した。

とにかく嬉しい式だった。
それが書きたかった。



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